06.05.2026 | カテゴリー, Tax
現在の分断された政治状況を踏まえると、米国議会において超党派の考え方が一致することは珍しいことですが、今回は、議員の間で一つの共通認識があるようです。それは、内国歳入庁(IRS)の改革が必要であるという点です。とりわけ、納税者や税務専門家とIRSとのやり取りを改善するため、税務当局の運営や手続を見直す必要がある、という認識です。
上院財政委員会の委員長であるマイク・クラポ上院議員(共和党・アイダホ州)と、ロン・ワイデン上院議員(民主党・オレゴン州)が提出した上院法案には、多くの改革案が盛り込まれています。IRSの納税者擁護官(Taxpayer Advocate)によれば、これらの提案は主として、納税者の権利を強化し、事務負担を軽減するとともに、税務行政全体の改善を図ることを目的としています。
本法案には、10の大きな分野にまたがる63の具体的な提案が含まれています。内容は、税務行政やカスタマーサービスの改善、海外在住の米国市民への支援、IRSの判断に異議を唱える納税者に対する司法審査手続の簡素化、納税者擁護官制度の強化、不適切な申告代行業者への対応、IRS控訴部門における納税者権利の強化、内部通報者(ホイッスルブロワー)の保護、海外で人質となっている米国市民に対する申告・納付面での救済措置、中小企業向けの行政救済など、多岐にわたります。
この法案に含まれる規定のうち、2つの項目は、すでに下院を通過した法案の内容と共通するものです。
その一つが、ペナルティに関する上司の書面承認要件を明確化する規定です。現行税法では、IRSの調査官が一定のペナルティを課す場合、その査定を行う前に上司の書面による承認を得ることが求められています。本法案では、この承認について、調査官が納税者に対し、IRS控訴部門への不服申立てや連邦裁判所への提訴が可能となる書面通知を交付する前に取得しなければならないことを、明確に定めています。
もう一つは、Tax Courtへの申立てが期限後となった場合の取扱いに関する規定です。通常、納税者は、不足税額通知の日から90日以内に税額を支払うか、Tax Courtに申立てを行う必要がありますが、本法案では、申立てが期限後となった場合でも、事情によってはTax Courtがこの90日間の期限を免除し、個別の事情や事実関係を踏まえて申立期限を延長できるようにすることが提案されています。
さらに、本法案には議論を呼んでいる規定も含まれています。それは、CPA、弁護士、EA以外の無資格申告代行業者に対する規制権限をIRSに認める内容です。この規定が導入されると、これらの申告代行業者は、申告代行者税務識別番号(PTIN)を取得する前に、継続教育の履修や身元調査を受ける必要があります。IRSによる申告代行業者の監督を支持する立場の人々は、無資格申告代行業者は、有資格者に比べ、特に還付可能な税額控除に関して多くの誤りを申告書に含めている傾向があると指摘しています。実際、個人の有料申告書を作成している申告代行業者の多くは、無資格業者です。
こうした規制の必要性を裏付けるものとして、申告代行業者規制の導入を支持する側は、新たな報告書を挙げています。非営利団体であるCenter for Taxpayer Rights(納税者権利センター)は、2025年の申告シーズン中、無資格申告代行業者の一部を対象に「ミステリーショッピング」と呼ばれる調査を実施しました。この調査は、申告代行業者が作成した申告書の正確性を検証することを目的としたものでしたが、その結果は芳しいものではありませんでした。多くの申告代行業者が、還付可能な税額控除、申告区分(filing status)、Schedule Cの項目で誤りを犯しており、自ら作成した申告書に申告代行者税務識別番号(preparer tax ID number)を記載していない例も見られました。