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2兆ドルコロナウイルス危機対策の経済対策法案発効のお知らせ

04.06.2020 | カテゴリー, Tax

コロナウイルス禍により米連邦政府は様々な対策を取っておりますが、その中で特筆すべき法案が今回公布されました。2020年3月27日、トランプ大統領はCOVID-19対策としておよそ2兆ドルの巨額ともいえる経済対策法案Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act(CARES 法への署名を行い、発効されることになりました。同法は企業のみならず、直接個人家計へ公的資金の注入を行うものも含まれておりますが、今回のニュースレターでは個人家計への対策については省略させていただき特に企業への税務面から簡単ではございますが概観をご説明させていただきます。

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Employee Retention Credit for Employers

今回のCARES法では適格雇用者に対し、従業員に対して支払った適格給与額の50%まで相当の給与税額控除を与えようというものが含まれております。この給与税額控除を受けることができる適格雇用者とはこのコロナ危機期間中、行政指導により完全または部分的に休業をやむなくされた雇用者であり、また2019年度中Full time従業員の平均数が100名以下であった雇用者と原則規定されております。(この100名以下の計算は関連会社が米国や米国以外の海外にある場合、それら関連会社を含めたControlled groupの従業員数で計算されることになりますので留意が必要となります。ただし例外に該当した場合には100名を超えた場合でも限定的に受けることは可能です。)また、開業中であってもこのコロナ危機の期間中の四半期売上が前年度の同一四半期に比べ50%を超え減少した雇用者にも適用されることになります。

税額控除となる給与税は雇用者負担分の内The Old-Age, Survivors, and Disability Insurance(OASDI)が対象となっており、一般にSocial Security tax(社会保障税)と呼ばれております。雇用者負担給与税率は6.2%となっておりますが、$10,000を上限とする適格給与支払い額に対する雇用者税に対して税額控除を取ることができます。還付可能な税額控除額は適格給与支払い額の50%までが認められます。計算方法としては以下のようになります。

3名の従業員に対して$15,000、$10,000、$8,000を支払った場合適格給与額は$28,000($10,000+$10,000+$8000)となります(前者の$15,000は$10,000が上限)。雇用者の社会保障税負担は$2,046($33,000x0.062)となり、税額控除対象は$14,000($28,000x50%)ですので還付

可能税額控除額は$11,954($14,000-$2,046)となります。実務的には、この還付可能額は連邦所得税や個人負担分の社会保障税、Medicare Taxおよび雇用者負担のMedicare Tax等、今回の制度において免除とならずに雇用主が納付しなくてはならない連邦給与税に充当し、四半期毎の雇用者給与税報告書(Form941シリーズ)で清算することができます。もしこの給与税額控除の還付を給与報告書以前に請求したい場合はForm 7200を提出することで前払い請求ができます。詳しい説明はこちらのIRSのWebsiteをご参照ください。https://www.irs.gov/newsroom/irs-employee-retention-credit-available-for-many-businesses-financially-impacted-by-covid-19

100名を超えた雇用者の場合、コロナの影響で閉鎖した期間中に働くことができないFull timeの従業員への給与支払のみが適格給与支払いとなります。

この税控除対象となる支払い給与は有給を取得した従業員への支払いであるかどうかは問題にされません。該当給与は2020年3月12日以降2020年12月31日までに支払われた給与となっております。

 

雇用者給与税納付の遅延を容認

雇用者は社会保障税(Social Security Tax)の雇用者負担分をIRSが定めたルールに従い報告・納付を行わなければなりませんが、今回のCARES法ではその雇用者負担分の納付を雇用者に通常適用されたルールに関わらず2020年12月31日までの納付遅延を認めることになりました。

雇用者負担給与税は通常FICAと呼ばれ、社会保障税とMedicare税の2つで構成されており現行7.65%(社会保障税 6.2%とMedicare tax 1.45%)となっております。このうち6.2%の社会保障税が納付遅延猶予の対象となります。全ての雇用者は2020年3月27日より、その雇用者負担分給与税額の50%を2021年12月31日までに納付し、残りの50%を2022年12月31日までに納付された場合にその納付が適時に行われたと看做すとされています。但し、雇用者がCARES法により受け取ったローンの免除を受けた場合はこの遅延猶予恩典の適用を受けることができません。

 

繰越損失額使用制限の短期的廃止

2018年税制改革により2018年1月1日以降に開始する税務年度において発生した損失はその後の課税所得の80%までしか充当することができないことになりました。

しかし今回のCARES法によりこの80%制限を廃止し課税所得に対して全額充当することが可能となりました。対象となる繰越損失は課税年度開始が暦年である場合、2018年1月1日以降、2020年12月31日以前に開始する課税年度において発生した損失が対象となります。課税年度が暦年ではない場合、例えば会計年度終了日が3月31日である場合、2019年3月31日、2020年3月31日、そして2021年3月31日に終了する会計年度の申告書において発生した損失がその対象となります。

 

損失の過年度繰戻の許可

2018年税制改正により2018年1月1日から2025年12月31日までに開始する課税年度に発生した損失は2年前までの課税所得繰り戻すことができるCary backルールが廃止され、将来への損失繰越のみが許可されておりました。

今回のCARES法により2018年1月1日以降2020年12月31日以前に開始する課税年度において発生した損失に限り過去5年に遡り繰戻しをすることが許可されることになりました。よって、2018年に損失がある場合、最大2013年まで遡り損失を充当することができるようになりました。

更に暦年以外の会計年度を利用している納税者の場合、例えば会計年度が2017年4月1日から2018年3月31日の場合税制改正ではその年に発生した損失の過年度繰戻しが認められておりませんでしたがTechnical correctionにより従来のルール通り過去2年への損失繰戻しが認められることになりました。

もし上記年度で損失を計上しており、且つその申告書上で損失繰り戻しをしない旨の選択を行っておられた場合、該当する年度において修正申告を行うことでその損失の過年度繰り戻しを行うことができ還付を受けることができます。

 

利子の損金算入制限の緩和

現行、利子損金算入制限は不動産業などの例外規定以外の場合、調整後課税所得の30%以内であれば全額認めるというルールとなっており、それを超える額は当期損金不算入となり、不算入額は翌期へ繰り越されることになっております。

今回のCARES法によりこの30%の上限ルールは税務申告年度が暦年の場合2019年から2020年に限って50%へ拡大されることになりました。納税者が暦年ではなく会計年度を用いている場

合、例えばその会計年度終了日が3月31日である場合は2020年3月31日、そして2021年3月31日に終了する会計年度までの申告書にて適用されることになります。

また選択により2020年の申告時に利子損金計算の為の調整後課税所得の計算の際には2019年での調整後課税所得の数字を使用することが出来るようになりました。

 

ボーナス減価償却の適格内装改築費用への適用

2018年税制改正により2023年まで減価償却費用の全額損金算入(ボーナス減価償却)がMACRS減価償却システム適用資産であり償却年数20年以下の資産に対して適用されることになりました。しかしながら、この法改正により賃借物件に対する適格内装改築資産(Qualified leasehold improvement)はボーナス減価償却の適用から除外されてしまいましたが、この除外は本来意図されたものではなく誤って除外されたものでした。

今回のCARES法では2018年1月1日以降、事業目的に使用開始した適格内装改築資産にもこの100%ボーナス減価償却が適用できることになり、全額損金算入が可能となりました。この新ルールは2018年1月1日以降に使用開始した適格内装改築資産から適用となります。

 

法人の代替ミニマム税(AMT)額控除

税制改正により2017年以降そして2021年以前に繰り越された代替ミニマム税額(AMT)控除の充当には制限がありました。繰越代替ミニマム税が通常税率で計算された税額を超えた額の50%までを上限とし、過払い税額として還付請求することができるとなっておりました。(2021年以降は100%除外)

今回のCARES法では税務申告年度の開始が2019年からこの50%上限ルールが廃止され全額充当することができるようになりました。これにより2019年度へ繰り越された代替ミニマム税は通常の税額から減額し残り全額を還付請求する、または通常の繰越税額として処理することが許されることになりました。

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以上簡単に新規公布されましたCARES法につきまして概観させていただきました。貴社への税務上の適用につきましてご質問等ございましたら遠慮なく弊事務所貴社担当へご連絡お願いいたします。

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