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米国個人所得税確定申告シリーズ (6) 米国市民権保持者の申告書提出期限・国籍離脱税

03.27.2026 | カテゴリー, Tax

シリーズ第6回目では、米国市民権保持者および永住権保持者の申告書提出期限、ならびに国籍離脱税(Exit Tax)について説明します。米国外に居住している場合の申告期限の取扱いや、市民権・永住権を放棄する際の税務上の留意点について、基礎的な考え方を整理します。

米国市民権保持者の確定申告書提出期限

米国の所得税申告書の提出期限は、原則として翌年4月15日です。また、申告により生じる所得税の納付期限も同日となります。

申告期限(4月15日)時点で米国外に居住している米国市民および米国永住権保持者については、一定の場合を除き、申告書の提出期限が自動的に2か月延長され、6月15日までとされています。ただし、この延長は申告書の提出期限に限られ、税金の納付期限は延長されません。4月15日以降に納付した税額については、利息が発生する点に注意が必要です。

さらに、6月15日までに延長申請(Form 4868)を行うことで、申告書の提出期限を10月15日まで延長することが可能です。

国籍離脱税(Exit Tax)と Form 8854

米国市民または長期永住権保持者が、市民権または永住権を放棄する場合には、放棄年の最終確定申告書に Form 8854(Initial and Annual Expatriation Statement)を添付してIRSへ提出することが義務付けられています。

長期永住権保持者(Long-Term Resident)とは、過去15年間のうち8年以上永住権を保持していた者を指します。なお、1年のうち1日でも永住権を保持していた場合、その年は1年としてカウントされます。

Covered Expatriate(Exit Tax の対象者)

市民権または長期永住権保持者で、以下3つの条件のうち、いずれか1つでも該当する場合、国籍離脱税(Exit Tax)の対象者(Covered Expatriate)となります。

 

  • Tax Liability Test

放棄日以前の過去5年間の連邦所得税の平均年間税額が $206,000(2025年基準)を超える場合

  • Net Worth Test

放棄日時点における全世界純資産額が $2,000,000 を超える場合

  • Tax Compliance Test

放棄日以前の過去5年間について、連邦所得税の申告・納税義務をすべて遵守していることを Form 8854 上で証明できない場合

 

なお、Exit Taxの対象とならない市民権保持者・長期永住権保持者についてもForm 8854の提出が求められており、このFormを提出することで、税法上市民権、永住権の放棄が完了したとして扱われます。なお、このFormを提出していない場合は、$10,000のペナルティが課せられる可能性がありますので注意が必要です

 

Exit Tax の計算方法

Exit Tax は、原則として Mark-to-Market(時価評価)課税の考え方に基づいて計算されます。市民権または永住権を放棄する前日に、すべての資産を時価で売却したものとみなして、みなし譲渡益を算定します。

このみなし譲渡益の合計額が、基礎控除額($890,000:2025年基準)を超える場合、その超過部分に対して当該年の所得税率を適用して算出された税額を、放棄年の確定申告において申告・納付する必要があります。なお、これらの金額は年度ごとに調整されます。

また、すべての資産に同一のルールが適用されるわけではなく、退職年金、繰延報酬、信託等については、Mark-to-Market とは異なる特別な課税ルールが適用される点にも注意が必要です。

Exit Taxの課税対象となる主な資産は下記になります。

1.不動産・有価証券(株式、投資信託など)

2.退職年金(401k、IRAなど)と繰延報酬

3.信託(Trust)と非公開会社株式

 

国籍離脱税は制度が非常に複雑で税務上の影響も大きいため、市民権・永住権の放棄を検討する初段階から専門家に相談し、十分な準備を行った上で計画的に対応することが重要です。

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